昨日、モンセラート・カバリエが85歳で亡くなりました。昨夜リヨン・オペラ座では「メフィストーフェレ」のHPが行われましたが、舞台袖や楽屋で皆口々にその訃報について話していました。しかし世代交代も相まって、録音や映像では彼女を知っていても、実際の舞台、歌唱を知る人はあまりいないかも知れません。僕は80年代半ばに生で彼女の歌を聴いたことがあり、少しだけ面識もあったので訃報を知りとても驚きました。
哀悼の意も込めて、今日は彼女がタイトルロールを歌ったドニゼッティの歌劇「アンナ・ボレーナ」ミラノ・スカラ座1982年公演の録音を聴きました。僕が彼女を聴いた頃に一番近い時期の録音です。
スカラ座で1957年以来公演がなかった「アンナ・ボレーナ」が25年振りに上演されることになり、その題名役を歌う事になっていたカバリエは、体調不良を理由に初日から出演をキャンセルしていたのですが唯一歌った公演にして、この公演を最後にスカラ座と訣別するきっかけとなったもの。ところどころに大きなブーイングも聞かれます。第2幕フィナーレ冒頭のレチタティーヴォ “Piangete voi? のハイCではカバリエとは思えない信じられない声が! そこですかさず物凄いブーイングが入ります。しかし、それに続くアリア “Al dolce guidami” では拍手喝采と、スカラ座の観客の怖さが顕著にみられる録音。
指揮はジュゼッペ・パタネ、主な配役は、モンセラート・カバリエ(アンナ・ボレーナ)、エレナ・オブラスツォワ(セイムール)、ポール・プリシュカ(エンリーコ3世)、アントニオ・サヴァスターノ(パーシー卿)他。ミラノ・スカラ座管&合唱団。
体調不良を押してでも歌わなければならなかったあなたの歌に対する信念、優しさ、手の温もりを一生涯忘れません。