今夜、リヨンのオペラ座はワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の初日です。
この「楽劇」というのは、ドイツ語の “Musikdrama” という言葉の和訳で、この「トリスタンとイゾルデ」以降に於けるワーグナー作品を主にそう呼びます。よって、ワーグナーの作品中でもそれ以前の「さまよえるオランダ人」、「タンホイザー」、「ローエングリン」は「歌劇」に分類されます。
因みに、ここで言う歌劇(オペラ)と言うのは、物語がレチタティーヴォ、アリア、重唱等が交互に置かれて演奏される形式のものを指します。ワーグナーと同時代の作曲家であるヴェルディが、この伝統的形式を継承しつつより発展させたのに対して、ワーグナーの楽劇に於いては、この枠に囚われることなく幕間まで曲が中断せずに続きます。
また、ワーグナーの楽劇は、北欧神話や中世の物語を扱っています。この「トリスタンとイゾルデ」は、ケルトに起源を持つと考えられている「トリスタン伝説」を基にフランスで12世紀頃にまとめられたものが題材となっており、イゾルデは仏語の「イズー」 “Iseult” のドイツ語音訳によるもの、オリジナルのウェールズ語では “Essylt” です。
昔、ハイドンの歌劇「オルランド・パラディーノ」に出演した際、オーケストラの中に「イズー」という名前のバイオリニストがいて、この名前の由来、意味について訊いた事を思い出します。
※写真は、オペラ座のHPから拝借しました。