この1週間、ずっとオッフェンバック漬けだったので、今夜は軌道修正です(笑)。
ガエタノ・ドニゼッティの歌劇「アンナ・ボレーナ」(1830年初演)は、「マリア・ストゥアルダ」、「ロベルト・デヴェリュー」と共にドニゼッティの「女王3部作」と呼ばれる作品の1つです。
ドニゼッティのオペラ・セリア、特にこの「アンナ・ボレーナ」を聴くと、ベル・カントの伝統が音楽的にも声楽的にもヴェルディの作品へと受け継がれていくのが良く分かります。
ストーリーは、イングランド王ヘンリー8世の妻となり、後に女王エリザベス1世となる子を生みながら、彼女に飽きた王から不倫の濡れ衣を着せられ斬首されたアン・ボレインの悲劇を描いたもので、終幕第2場から幕切れまでの、所謂、「狂乱の場」が一番の見せ場です。
今回のCDは、タイトル・ロールには、当時、全盛期にあったマリア・カラス、その他、ニコラ・ロッシ=レメーニ(エンリーコ8世)、ジュリエッタ・シミオナート(ジョヴァンナ・セイモール)、ジャンニ・ライモンディ(リッカルド・パーシー卿)等の配役で、ジャナンドレア・ガヴァッツェーニ指揮、ミラノ・スカラ座管&合唱団によるミラノ・スカラ座での1957年のライヴ録音です。また、この時は1877年以来、実に80年振りにスカラ座で上演されたわけですが、名匠ルキノ・ヴィスコンティによる演出で大成功を収めています。
演奏の方は、何をおいてもドニゼッティの研究家でもあるガヴァッツェーニの作品解釈と創り出される音楽、壮絶と言っても過言ではないカラスの歌唱が秀逸で、他に類を見ません。古い録音なので音質は決して良いわけではないのですが、この演奏を聴いてしまうと、他の演奏はもう聴きたくないと言う気にさえなってしまいます。それでも強いて挙げるとすれば、1982年のスカラ座のシーズン開幕にモンセラ・カバリェの代役を務めたチェチーリア・ガズディアの演奏は素晴らしかったですね。当時の彼女はまだ弱冠22歳ですが、それを抜きにしても凄いですよ。
因みに、僕が初めて藤原歌劇団の公演を観たのは、1982年の「アンナ・ボレーナ」(タイトル・ロールは林康子さん)でした。