ムッシュー・フジタ

Léonard Foujita今年生誕120年を迎えた藤田嗣治氏は、東京美術学校を卒業後、1913年に渡仏。モディリアニやスーティン等と共にエコール・ド・パリの代表的画家として活躍しました。第二次大戦時には、従軍画家として戦争画を描きましたが、大戦が終わるとまたフランスに戻り、その後、二度と日本の土を踏むことはありませんでした。

リヨン・オペラ座の12月の演目は、レハールの喜歌劇「メリー・ウィドウ」です。仏語版の上演ですが、今回は演出家により、新たに様々な登場人物が追加されていて、オリジナルのドイツ語版とは話の大筋は同じでも、登場人物の名前、国名等も違うので、始めは誰が誰の事なのかさっぱり分かりませんでした(笑)。因みに、時・所の設定は1920年代のパリです(原作では1905年初演当時のパリ)。
第3幕は原作では「マキシム風に飾り付けたハンナ邸宅」(仏語版でハンナはミッシア)となっていますが、仏語版では本物のマキシムが舞台なので、これを良い事に演出家は、当時パリにいた(しかもマキシムのすぐ傍にアトリエの1つがあった!)藤田氏を蘇らせ、日本人である僕に演らせる事を思い付いたのです。勿論、本編とは関係ないので黙役ですけどね(^^;
今尚フランスで最も有名な日本人、レジョン・ドヌール勲章も受章した藤田氏のトレードマークとも言うべき「おカッパ頭」は余りにも有名なので、どうやら僕の頭もこんな風にしようと言うつもりらしいのですが、9月にシーズンが始まって以来、髪の毛を勝手に切るな!と言い渡され、長く伸びても切れない上に、切られてもこの髪型にされてしまうのかと少々悩んでいます(笑)。

藤田氏はまた、猫好きとしても知られていますが、猫の展覧会の審査員を務めた事もあるそうです。その彼が猫について次の様に語っています。

私は猫を友達としている。(中略)
猫を友達とする訳は、猫は野獣性と家畜性との二つの性質を持っているので、そこが面白いと思うのである。ライオンの仔やトラの仔は、初めのうちこそ家に置いてもよいだろうが、大きくなるとこれは始末に困るに違いない。
猫に猛獣の面影がある所がよいのである。

明治の人とは思えない考え方、センスの良さに感嘆してしまいますが、彼が40歳の時に、「私」について語った言葉に共感を覚えます。

私は、フランスに、どこまでも日本人として完成すべく努力したい。私は、世界に日本人として生きたいと願う、それはまた、世界人として日本に生きることにもなるだろうと思う。

初日まであと2週間足らず、体型は真似出来そうにないけれど(笑)、せめて内面だけでも本人に近づける様、努力せねば…。

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