昨夜はドヴォルザークの「スターバト・マーテル」の本番がありましたが、今回はテノール・ソロのカヴァーを務めました。
予定していたソリストが不調と言う事で依頼を受けたのが火曜日の夕方で、水曜日の朝のリハーサルから参加。カヴァーは表舞台には姿を出さない要員で、リハーサルが滞りなく遂行される事と、万が一の場合には代わりに本番を務めなければならないので、本役よりも体調とか気にしちゃって結構大変なんですよ。勿論、本番も歌えば報酬もそれなりに…なんですけど、それはまた別問題です(笑)。
この「スターバト・マーテル」は、1875年9月に長女を失ったドヴォルザークが翌年2~5月に作曲したピアノ伴奏によるもので、多くの文献ではオーケストレーションの前の「スケッチ」と書かれていますが、その後1877年に相次いで更に2人の子供を失った際に完成に至った、今日通常演奏されるオーケストラ版とは部分的に異なる為、「1876年版」(または「オリジナル版」)と言う風に区別されます。
当時の彼は既に音楽家として成功を収め、仕上げなけらばならない曲が他にも沢山あり多忙だった事は明らかですが、この1876年版は曲数が7曲とオケ版に比べて3曲少なく、終曲の後半部分(アーメン)は途中で書くのを止めてしまったのではないかと言う印象すら受けます。その辺が「スケッチ」と言われる所以かもしれませんが、実際には子供を失った悲しみが再びこみ上げてきて上手く書けなかったのではないかと言う気がしなくもありません。
この1876年版の楽譜(写真)は、ベーレンライター社プラハ支店からのレンタルのみです。基本的にコピー譜を使用しての演奏は例外を除いて著作権等の理由で禁止されているので、演奏の度にレンタルする事になります。オケ版の方は多社から出版されているので用意するのも楽なんですけどね。