1993年からスイスのヴェルビエで毎夏開催されているヴェルビエ音楽祭ですが、その最終日を締め括る8月3日、リヨン・オペラ座の音楽監督でもあったイヴァン・フィッシャーが指揮するヴェルビエ祝祭管弦楽団のコンサートがありました。
このコンサートの模様はインターネットでも同時配信されたので、リヨンに居ながらにしてその演奏を聴くことが出来ました。
プログラムの前半は、ミハイル・プレトニョフをソリストに迎え、ハイドンの「ピアノ協奏曲ニ長調 Hob XVIII:11」。この曲は元々チェンバロ協奏曲として書かれたものですが、今日ではピアノ協奏曲として最も多く演奏される曲の1つです。
そして後半は、マーラーの「交響曲第6番イ短調 “悲劇的”」。この曲はフィッシャー自ら率いるブダペスト祝祭管弦楽団とも演奏していますが(2005年にはCDリリース)、ここヴェルビエの若い音楽家たちからなる祝祭管弦楽団とでは、どのような演奏が聴けるのかとても興味がありました。
と言うのも、フィッシャーがリヨン・オペラ座の音楽監督に就任する以前、ブダペスト祝祭管と共に行ったワールドツアー中、パリで行われたコンサートをラジオで聴く機会があったんです。既にフィッシャー&ブダペスト祝祭管の評判は耳にしていましたが、こんなに凄いとは想像していなかったんですよね。ラジオでこうなんだから実際の音はもっと凄いに違いないと!
そして、彼が音楽監督に就任後間もなく行われたコンサートでは、何とパリと同じラフマニノフの「交響曲第2番ホ短調作品27」が演奏されました。そこでこれまで聴いた事もない音をオペラ座管から聴くことが出来たのです。あの時のあの素晴らしい音楽はフィッシャー自身が創り出しているのだと確信しました。そして、そういう人がリヨンにいる事がとても嬉しくて仕方がありませんでした。それ故に総監督と反りが合わなくて3年足らずであっ気なく辞任してしまった時にはショックでしたね。
とこんなわけで、今回のマーラーの演奏もとても興味があったのですが、楽員らは若さ故テクニック的に十分ではない箇所がそこかしこに見受けられはしましたが、曲全体としての出来栄えをみた場合、その期待に十分値する素晴らしい演奏でした。そこにはフィッシャーの創り出す生きた音楽がありました。これからも注目していきたい指揮者の一人です。