シャンゼリゼ劇場

シャンゼリゼ劇場「第1次大戦休戦記念日」の祝日だった11日(木)は、ロッシーニの歌劇「オテロ」の公演の為パリに行っていました。
リヨンのオペラ座での公演同様、演奏会形式による公演だったので、出番以外も舞台上にいなくてはならず、旅の疲れも加わりとても大変でした(><;
シャンゼリゼ劇場ではもう何度も歌っていますが、老朽化の為に行われた改装工事により音響効果が良くなり、数年前、改装後初めて行った時にはとても驚きました。また、元々あった内装も化粧直しして昔の輝きを取り戻し、演奏者にとっては勿論だけれど観に来てくださるお客さんにとっても心地好い空間として蘇ったんじゃないかと思います。
写真は劇場の天井部分で、本番に先立って午後に行われたダメ出しの時に舞台上の僕の席から撮ったものです。字幕スーパー用の電光パネルとラジオ収録用のマイク・スタンドが一緒に入ってしまっているのがちょっぴり残念ですが、色鮮やかな天井画、客席の赤、バルコニーの金を照らす暖色系の照明が、社交場としての劇場の良い雰囲気を醸し出していると思います。

ロッシーニの歌劇「オテロ」は、あまり上演される機会がない作品の1つですが、僕にとってはこれで3度目になります。
1回目は1991年、ロッシーニの生まれ故郷であるイタリア、ペーザロで毎夏開催されているのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルでの公演(1988年新演出の再演)を聴衆として観たのが最初です(クリス・メリット、チェチーリア・ガズディア、ウィリアム・マッテウッツィ他)。勿論、歌は良かったし、ピエール・ルイジ・ピッツィの演出・舞台・衣装がとても綺麗でした。因みにその年、僕はフェスティヴァルと並行して開かれるロッシーニ・アカデミーに受講生として参加していたんですけど、受講生は優先的に公演やリハーサルを観る事が出来たのでとてもラッキーでした(^^)V
2度目は1995年、ニースのオペラ座での公演(クリス・メリット、レッラ・クベルリ、ロックウェル・ブレイク他)で、僕は第3幕冒頭に登場するゴンドリエーレ役を演る事になっていたんです。ところが、劇場側の手違いでキャストから外れざるを得なかったんですよ!ニースのオペラ座時代は、一番最初に契約が決まった1993年の時から様々な理由で度々そういう事があったのでこれが初めてというわけじゃなかったんですけど、だんだんそれが鼻に付き出して、結局は契約満了前に僕の方から辞めてしまったんです。それでも、皮肉な事にリヨンのオペラ座に入った後もしばらくは出演依頼が続いたんですよ。ニースでは良くも悪くも色々な経験を積ませてもらいました。
そして、今回のリヨン、パリが3回目だったわけですが、ニースの公演から実に15年振りでした。クリス・メリット(オテロ)やロックウェル・ブレイク(ロドリーゴ)の強烈な印象が未だに僕の中に残っているので、それ以上の演奏に巡り会うのがなかなか容易ではありませんね。でも、超絶技巧を得意とするテノールを何人も揃えること自体とても大変な演目なので、またこうして上演出来る機会が得られる事の方が、もしかしたらより重要な事なのかもしれませんけどね。

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2 Responses to シャンゼリゼ劇場

  1. Voce interna のコメント:

    シャンゼリゼの「オテロ」公演、聞かせて頂きましたよ。
    ドニゼッティの演奏会形式シリーズや、オペラ・コミックのシャブリエに続き、パリに居ながらにしてひでさんのご活躍にまたまた接することができて嬉しかったです。
    91年ペーザロ、95年ニース、そして今回と「オテロ」の重要公演に何度も参加されてるんですね。
    私にとっては忘れがたい88年のペーザロ公演以来、久々に接した「オテロ」実演で、アントナッチの役デビューや新世代テノールの登場もあって楽しみにしてた上演でした。
    私もブレイク、メリットのロッシーニ歌唱の強烈な呪縛から逃れられずにいますが、今回ロドリーゴを歌ったコルチャクはなかなか旋律線の表現性もあり、ブレイクになかった声の美しさもあって、公演全体としても存分に楽しませて頂きました。
    ゴンドリエーレ役は重要な聞かせどころがあるから、残念でしたね。
    改めて現場の方のご苦労は並大抵ではないんですね。
    シャンゼリゼの音響は客席から聞く以上に、ステージから聞く音響が恐ろしくドライだったと聞いていますが、あのステージ上方の反響版設置で、ステージ側の音響はかなり改善されたということでしょうか。
    客席から聞く分には、平土間の音響はやや改善されたもののバルコン席からは殆ど変化ない印象を持っています。
    次回、楽しみにしてます、リヨンは定期的にパリに来演してくれることもあって、リヨンの劇場に足を踏み入れたことは一度もない始末で、我ながら恥ずかしいんですけどね。

  2. ひで のコメント:

    Voce internaさん、こんにちは。
    > 私もブレイク、メリットのロッシーニ歌唱の強烈な呪縛から逃れられずにいますが
    やっぱり!
    因みに、88年の公演は手元に映像があります。また、YouTube等で一部を観ることが可能ですが、この翌年急逝した指揮者のプリッチャードの貴重な演奏でもありますね。
    役が求める本来の声質にも合っている上に、ロッシーニ歌唱になくてはならないカデンツ、フィオリトゥーラ、ヴァリエーションがこれでもかと言う程にちりばめられていて、この曲の魅力を存分に味わう事が出来ますね。
    そう言う意味からいくと、今回の公演には音楽学者でロッシーニの権威であるフィリップ・ゴセット氏も監修として参加していたんですが、歌手の力量に合わせてその辺のところがかなり簡略化されていたように僕には感じられましたね。全体的な演奏としては何が悪いというわけではないんだけれど、何か物足りないという印象でした。
    > 今回ロドリーゴを歌ったコルチャクはなかなか旋律線の表現性もあり、ブレイクに
    > なかった声の美しさもあって、公演全体としても存分に楽しませて頂きました。
    コルチャクはまだ弱冠31歳。これからどう成長するか期待したいですね。
    > ゴンドリエーレ役は重要な聞かせどころがあるから、残念でしたね。
    > 改めて現場の方のご苦労は並大抵ではないんですね。
    ニースは契約破棄してしまったので結局3年しかいませんでしたけど、今数えてみたら役が決まっていながら劇場側の都合で歌わなかったのはこのゴンドリエーレ役を含めて5回もありました!ね、我慢にもほどがあるでしょ(笑)
    > シャンゼリゼの音響は客席から聞く以上に、ステージから聞く音響が恐ろしく
    > ドライだったと聞いています
    初めてシャンゼリゼに行ったのは改装工事前の1998/99年のシーズンでしたが、
    歌っていて辛くなるほどでしたよ(^^;
    >次回、楽しみにしてます、リヨンは定期的にパリに来演してくれることもあって
    それでは次回、来年の1月オペラ・コミークでプーランクの「ティレジアスの乳房」で
    お会いしましょう(^^)

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