ヴェルディの歌劇「ルイザ・ミラー」は先シーズン、リヨンのオペラ座でも上演されたのでまだ記憶に新しい方も多いかと思います。
写真は、1976年5月にミラノ・スカラ座で上演された同作品を収めたライブ録音のCDです。モンセラ・カバリエ(ルイザ)、ルチアーノ・パヴァロッティ(ロドルフォ)、ピエロ・カップチルリ(ミラー)、カルロ・ザルド(ヴァルター伯爵)と言った当時最高の歌手陣が一同に会し、ジャナンドレア・ガヴァッツェーニが指揮をしたこの演奏は、この作品に於ける名演の1つに挙げられます。
僕の手元にはこの録音の他にも3つ違う録音があるんですけど、そのどれもがそれぞれ悪くはないのですが、やはりこのガヴァッツェーニ盤がナンバーワンですね。歌手陣の歌唱は言うまでもないし、スカラ座管の奏でる音もさることながら、それら全てをサポートするガヴァッツェーニの指揮、作り出す音楽は特筆すべきものがあります。これぞ正真正銘の正統派ヴェルディ!と呼ぶに相応しい演奏です。
このスカラ座公演と同年の10月11日、ガヴァッツェーニはヴェルディの歌劇「イル・トロヴァトーレ」を指揮してニューヨーク・メトロポリタン歌劇場にデビューしています。この時の主な配役は、ルチアーノ・パヴァロッティ(マンリーコ)、レナータ・スコット(レオノーラ)、マッテオ・マヌグエラ(ルーナ伯爵)、シャーリー・ヴァーレット(アズチェーナ)です。タイム誌には、「ガヴァッツェーニは常に歌手陣に対して細心の注意を払いながら、一貫して制御された完璧なパフォーマンスへと導いた…第4幕レオノーラのアリアに於けるスコットへのサポートは永年人々の記憶に留まるであろう」(大意)という内容の評が掲載されました。これはイタリア・オペラの伝統を重んじた彼に与えられた、最高の賛辞だと思いますね。
尚、一部ではデビュー作品が「イル・トロヴァトーレ」ではなく「椿姫」と記載されている場合がありますが、これは間違いです(メトロポリタン歌劇場の公演記録で確認済み)。
ガヴァッツェーニの演奏は、テレビやCD、ビデオでは何度も見聴きしましたが、まだミラノにいた頃に実際に指揮をしている姿を見る機会がありました。スカラ座のチレアの歌劇「アドリアーナ・ルクヴルール」とプッチーニの歌劇「蝶々夫人」の公演です。当時もう既に80歳を超える高齢だったわけですが、そんな事をまるで感じさせない素晴らしい演奏で、あのエネルギーは一体どこから沸いてくるのかと不思議に思いました。
1996年2月に86歳で亡くなった時、スカラ座でムーティ指揮により音楽葬が行われたのを今でも覚えています。アルトゥーロ・トスカニーニの流れを汲む偉大な指揮者の死は、また、1つの時代の終わりでもありました。
今日のオペラ座のリハーサルは、ヒンデミットの「聖スザンナ」のオケ合わせだけで男声は必要なかったのでまたしてもお休みでした!
でも明日は、朝から晩までベッリーニの歌劇「カプレーティ家とモンテッキ家」のリハーサル、それに加えて、オッフェンバックの喜歌劇「パリの生活」(2007年演出の再演)の衣装合わせもあるし、滅茶苦茶忙しいんですけどね…(><